森ミドリからのメッセージ

チェレスタとの出会いについて


ホームページをご覧いただき、ありがとうございます。
数年前、チェレスタという楽器に出会い、今の、この喧騒の世の中にこそ求められる楽器だと直感し探し始めました。さすがに、個人で持っている人は皆無に近く、なかなか見つけ出せずにいましたが、夢を持ち続けた甲斐あって、ようやく一台のミュステル製の楽器に巡り合うことができたのです。

チェレスタは、1886年にフランスのオーギュスト・ミュステルが鍵盤打楽器として完成させた、比較的新しい楽器です。仕組みはピアノとほぼ同じですが、見た目は、昔よく小学校にあった足踏みのオルガンに似ています。ピアノは最後にピアノ線に触れることによって音を出しますが、チェレスタは鉄琴に触れて音を出します。

実はある時、オルゴールのCDを買い求めましたら、それは本物のオルゴールではなく、シンセサイザーで打ち込んだ人工的な音源で作られていました。とても癒しまでいかないといいますか、心を感じ得ない、いわゆるオルゴールもどきだったのです。とてもガッカリしました。チェレスタも美しく清らかな音なのでサンプリングして使っていることも多いのですが、私の耳には、まったく別の音に聞こえます。単に機械的ではなく、やはり心というものを持ち合わせている人間の手によって弾くことで「人に求められる音」としてやさしく伝わるものではないかと感じたのです。

また、これまで良しとされていたリズム正しく、完璧に、そして正確に・・・という事よりも、人間としての本来のリズムに加え、速さだけではない、大切な、間(ま)、空間、余韻、息などを大事にして弾くことも必要なのではないかしら、と。ですから眠っているときの鼓動よりも、さらにゆっくりと、ゆったりと、海に漂うような心地よい演奏、消え入るような演奏をしたいと思いました。

あのチャイコフスキーは、1892年、パリで初めてこの楽器に出会い、「ああ、天来
(てんらい)の妙音(みょうおん)だ!」と感嘆の声を上げたそうです。それでも、これまでオーケストラの中ではほとんど出番がなく、あっても隠し味程度にしか使われず(チェレスタと銘打った曲のタイトルは数曲しかありません)、どちらかといわずとも、脇役の楽器でした。

バラに添えられるカスミ草。実はカスミ草だけでフワッと束にしても、それはそれでなかなか雰囲気がある花束ができることをご存知の方は少ないようです。そんなカスミ草を主役に・・・そんな想いでチェレスタを主役にしたのです。つまりはチェレスタをソロ楽器として、五枚組のCD『チェレスタはゆりかご』を出しました。おそらく世界で初めてではないか、と評論家や存じ上げる作曲家たちが口にされますし、私もそうだと確信しています。

私の一番したかったのは《天空》で、75分間、あの野口聡一さんのように実際には飛べずとも、心だけでも思いを馳せて宇宙空間を散策する想いで、即興で弾き通しました。一切の編集はもちろん、カットもせず作り上げるのが夢で、実は、集中したため、ハッと時計に目をやったときには一分前の74分。それほど幸せな、とっておきのひとときだったのです。今でもあの75分を忘れることはできません。

その後CDが完成し、いろいろな方にお聴きいただきましたが、思いがけない反響がありました。それは「不眠症が治った」という人が続出したこと。また、「赤ちゃんができたので、胎教として聴いていますが、とてもふさわしい楽器だと感激しました」という声もあちらこちらから聞かれるようになり、とても嬉しく思いました。それはおそらく、チェレスタの音が倍音のない純音だからなのかもしれません。

歌人の俵万智さんは「うちの子は《五木の子守唄》になると必ず眠ってしまうのよ」とおっしゃっていましたし、作家の太田治子さんは、星空を眺めつつ、よく《天空》を聴いてくださっているとか・・・。大勢のみなさまに、これまで耳にしなかった響きとして喜んでいただいております。

一年ほど前、もう一台手に入りましたので、先の楽器を「お姉ちゃん」、後の楽器を「妹」と呼び、夫よりも(?)大事にしております。妹もこの六月、新潟県の長岡市で初デビュー。
二人とも・・・いえ、二台とも旅が好きなようで、ホッとしているところです。
まだまだ世の中に浸透していないチェレスタ。今後もできる限りいろいろな町へ出かけ、みなさまに「弾くオルゴール」として心身を癒していただければ、こんなに嬉しいことはありません。

表現としては

水琴窟の音にメロディーがついたような・・・

星が空から降りそそぐような・・・

微風に揺れる風鈴に曲がついたような・・・


とでもいいましょうか。

そう、オルゴールよりオルゴールらしいわね、といわれた方がいましたが、これはとても嬉しい言葉でした。

ピアノがあればピアノの弾き比べをし、みなさまからのリクエストを中心に、演奏とお話で綴りつつ、静かなひとときを楽しんでいただくコンサート。

ときには、子どもたちに、ごろごろんコンサートといって、寝ながら聴いてもらう(もちろん眠ってしまってもいいのです)コンサートも・・・。
結局は大人たちも眠ってしまうんですけどね。
どんな形であれ、私のチェレスタと共に、できるかぎり参りますので、ぜひ、お声をかけてくださいね。心からお待ちしております。


森ミドリ

indexにもどる